現在の帝劇は、2月中に閉館し、建て替えの上2030年オープンの予定。
設計者は小堀哲夫と発表された。
小堀哲夫は、1971年生まれ、法政大学(陣内ゼミ)卒業、久米設計、2008年より小堀哲夫建築設計事務所。現法政大学教授。建築学会賞、JIA大賞受賞。
代表作に「ROKI Global Innovation CenterーROGICー」「NICCA INNOVATION CENTER」「梅光学院大学」などがある
東宝は、日本を代表する建築家数名に指名コンペを依頼し、中から総合的に最も優れていた小堀案を選出したとしている。
現在の劇場と最も大きく変わるのは、入り口はほぼ同じところだが、そこから劇場へ真っ直ぐ進んでゆく、軸線が90度変更になることだ。
地下にも入り口と大きなロビーができるという。
トイレも格段に増設されるので、今のように休憩時間に長蛇の列ができることはなくなる。
座席の間隔も広くなり、快適になる。
全体に現在のロビーが外に対して閉鎖的なところを、せっかく皇居前、お濠端という絶好の立地なので、豊かな眺望を楽しめるロビー、カフェ、レストランなどを用意する、その他、多くのことが検討中で、世界中のどこと比べても見劣りしない100年使える良い劇場にするという。
この機会に現在の帝劇を見ておこう。
谷口吉郎設計、1966年竣工、国際ビルディングの一部。皇居に面した外壁全面をガラスとステンレス、さらに谷口の出身地金沢の九谷焼のタイルで覆ったもの。
劇場建築としては、非常に抑制された静かな外観である。
ガラス、ステンレス、タイルの、極めて端正な外壁。
この端正な美意識は、谷口の息、谷口吉生に引き継がれているものだ。
ロビーの吹き抜けには猪熊弦一郎による、大きなステンドグラス、さらに階段の途中に「熨斗(のし)」のモニュメントがひときわ目をひく。
2階ロビーから見たステンドグラス。
階段の踊り場に設置された猪熊弦一郎によるモニュメント「熨斗」は天童木工で作られた。合板を曲げて整形した後、黄銅板を加工して制作された。ロビーの中で異彩を放っている。
現在の帝劇、なかなか見事なものだが、残念ながら取り壊しが決定したので、次の三代目帝劇に期待するしかない。
というわけで、2030年開館予定の小堀による三代目、新帝国劇場に期待したい。
12月16日、谷口吉生さんが亡くなった。
享年87歳
今年、6月6日には槇文彦さんが亡くなった。
享年95歳
2年前の2022年12月28日には、磯崎新さんが亡くなっている。
91歳だった。
左から、槇文彦、谷口吉生、磯崎新
こうして、丹下健三の弟子たち、日本のモダニズムの先頭走者たちが次々にこの世を去っていった。
日本の近代建築は大きな節目に差し掛かっている。
いや、すでに節目は通り過ぎて、新しい時代になっている。
一方で、今年、山本理顕(78歳)がプリツカー賞を取った。
これは、新しい時代を示唆しているのかもしれない。
山本理顕
第7回講演会「村野藤吾」は、9月28日、無事に終了しました。
参加された大勢の皆さんにお礼申し上げます。
当日の講演会の様子はYouTube、こちらからご覧いただけます。
過去の講演会のyoutube動画は下記の通りです。
第4回目は、2023年6月18日、「磯崎新と日本の近代建築」
講演会の様子はYouTube、こちらからご覧いただけます。
第5回目は、2023年9月27日、「日本で活躍した外国人建築家」
講演会の様子はyoutube、こちらからご覧いただけます。
第6回目は、2024年3月2日、「女性建築家:長谷川逸子・妹島和世」
講演会の様子はyoutube、こちらからご覧いただけます。
近代建築と市民の会主催「第6回 近代建築に親しむセミナー」は終了しました。