カサ・ミラが楽しい

カサ・ミラは、アントニオ・ガウディ設計(1910年頃)の高級アパートだが、バルセロナのメインストリート、グラシア通りに岩山のようにそびえていた。

うねる壁面が目を引く。各階の形が全部異なる。窓の大きさ、位置もすべてバラバラだ。

二階のベランダだけ、柱が立っている。特別な室なんだろうか。まるで自然界の波の造形のようだ。

外壁も、外壁と一体になったベランダの自由な形も、みーんな石を掘って作り上げたもの。岩に昆布が絡み付いたようなベランダの手すりは、鉄を切ったり曲げたりして作ったもの。

石は柔らかい曲面だけかと思うと、思わぬところに鋭いエッジが切ってある。ガウディの毅然とした造形意思が現れている。

洞窟へ入ってゆくようなアパートへの入口。入り口のドアまわりは鍛鉄の曲線だけで出来ている。海岸に打ち寄せる波の泡のようにも見える。左下の小さな扉を開けてアパートの住民が出入りしていた。

中庭。ここに向かって思い切り沢山の窓が取られている。アパートの廊下などがそこに面している。

先ほど外から見た玄関を内側から見た。普段の出入り口は左右の小さな扉を使っている。左の木造のドアが普通の大きさ。

ほとんどが無彩色な建築のなかで、玄関の天井だけがカラフルだが、それも淡いパステル調だ。初めて現れた色彩だ。

階段の手すり。鍛鉄の職人の技が冴える。この時代、バルセロナにはまだ数多くの優れた職人がいた。鉄、木、石などが彼らの腕によって命を与えられた。ガウディは彼らの技を引き出し、かれらに表現の場を与えた。

玄関ホールである。

エレベーターでいきなり屋上へでた。屋上の床は凹凸が激しく、階段だらけ、不思議な造形物が一杯立ってまるで遊園地のようだ。

穴が空いているが、煙突ではなさそうだし、換気口だろうか。

モザイク張りもあった。いったい何を表現しているのだろうか。

サグラダ・ファミリアが見える穴があった。遊び心があふれている。

ユーモラスな彫刻だが、何か叫んでいるような、何かを訴えているような表情にも見えてくる。

中庭を見下ろす。傾斜して打ち寄せる波のような屋根に小さな窓が沢山明いている。これからその天井裏の室へと移動する。波打つような屋上の形の秘密を見にゆこう。

屋根裏はガウディ博物館になっていた。あの傾斜した屋根や屋上の階段の下はこんなヴォールト天井で支えられていたのだ。たしかに小さな窓もある。

よく見ると、なんとも繊細なレンガでできたアーチ状の構造であった。カタロニア地方に伝えられて来たカタロニア・ヴォールトという伝統的な技術であるらしい。それにしても、これであの屋上の構造物がもつのだろうか。あまりにも華奢な構造に驚かされた。

レンガの構造はあくまでもモルタルでレンガを接着するという、単純な職人の手作業なので、イレギュラーで柔らかい。こんな華奢な構造であの屋上を支えているなんで信じがたい。

しかも、竣工後100年たっているのに、雨漏りも痛みも見えない。

ヴォールトは離れたり集まったり、まるで貝殻や甲殻類のような自然界の造形のように見える。

ガウディが聖堂の構造を検討するために製作した逆さ吊りの模型。チェーンが重力によってつくる形が最も合理的と考えて、これを上下逆さまにした形に作ろうとした、といわれている。

近代建築がひたすら鉄、ガラス、コンクリートなどの工業製品を使って、幾何学的な造形を追求したのに対して、ガウディは迷うことなく生物をお手本にした有機的な形を追求した。このため、近代建築に飽き足りない人々がガウディに魅力を感じるのは自然の成り行きなのかもしれない。

ガウディの作った椅子も展示してある。木材もガウディの手にかかれば、まるで粘土をこねて作ったように柔らかい曲線になってしまう。

アパートの一戸分が公開されている。高級アパートのため、部屋数も多く、しかも全ての室が固有のデザインで作られている。

ドア周りの縁飾りの彫刻、控えめではあるが、手の込んだ繊細な彫刻が施されている。

ドアの板にも薄いが美しい彫刻が施されている。

ガウディの建築は大げさな装飾が特徴と思われているが、このような薄肉のかすかな造形にこそガウディの本領が発揮されている。この微かな凹凸によってできたリング、この表現力、驚くべき技だ。

カサ・ミラの中でも最高の見所である。

ここも、負けずにうす肉のコテ細工が施されている。ここはもう少しリアルな造形が見えている。このうす肉の細工こそ高度に熟練した職人技である。

これらは、居間や食堂の天井であるが、どちらがなんの室か忘れてしまった。

カサ・ミラは地下駐車場を備えていた。これはそのための斜路である。この頃、いったいどのくらいの人が自動車を所有していたのだろうか。

 

カサ・ミラは隅から隅まで、ガウディが熟練の職人たちの技を駆使して作り上げた傑作である。しかも内部が公開されており、ガウディの造形を十分に味わうことができる。とくに天井裏のカタロニア・ヴォールトの構造が十分に観察できること、居室の内部を見せてくれることは、もっとも興味深いところである。

曲線のみでできあがった建築は、近代建築の直線だけの建築になれた現代人には異様な雰囲気を感じさせるかもしれないが、これこそ本来の人間の住まいかもしれない、と思わせるものがある。

サグラダ・ファミリアで失望しても、カサ・ミラで救われる。バルセロナはやはり面白い。

 

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コメント: 1
  • #1

    kei (火曜日, 24 12月 2013 02:00)

    カサミラ いってみたいな! コクトーの美女と野獣のお城みたいにみえました。

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

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