2013年

10月

19日

自然環境を手に入れた研究所

ROGIC 設計:小堀哲夫 2013
ROGIC 設計:小堀哲夫 2013

あふれる光。整然と並んだ気品のあるデスクと椅子。そして緑。

目の前に展開したのは今までに見た事のない不思議な光景だった。

何層にもかさなって見えるフロアが、すべて大きな半透明な屋根の下に配置されている。どこにもまんべんなく自然光が届いている。

ここは、浜松市にある自動車用フィルターの世界的な企業ROKIの研究施設ROGICである。研究者に思いっきり豊かな環境を与えて、のびのびと研究してもらおうという意図から、こんな思い切った研究所ができた。

設計は気鋭の建築家、小堀哲夫。ここまで思い切った設計が出来たのは、オーナーから全幅の信頼を得て自由に腕が振るえたからに違いない。

柱のない大きな空間、まるでフラードームのようだ。

天井の菱形の半透明の素材は、この会社の製品である不織布のフィルターが使われている。この天井は光を通すだけでなく、空気もここから供給されている、いわば呼吸する天井だ。

この会議室や応接室と見違えるようなデスクと椅子は、研究者が自由に使う研究室そのものである。なんと贅沢な環境!

それにしても、この大きな屋根、いったい柱はどこにあるんだろう。いったいどんな構造になっているんだかさっぱりわからない。

おお、透明な天井があった。フィルターの裏に鉄骨の構造が見えた。フィルターがすっかり屋根の構造を隠していたのだ。木製の骨組みで軽やかに覆われているように見えたのは、あくまでも表面の仕上げだったのだ。この構造設計、オブ・アラップだそうだ。

どこから中で、どこから外かわからないほど、のびのびとした空間だ。

横から見ると、三層の床の上に大きな屋根がかぶさっている様子がよく分かる。

V字形のシャープな柱が屋根を支えているのがよく分かる。鋳物か?

研究所といえば、白い天井に蛍光灯で1年中朝から晩まで均一の環境というのが常識だが、ここでは、半透明の屋根からの自然光のもと、室内で季節の変化を感じ、一日の内に朝、昼、晩と時間の変化を感じ、晴天も雨も直ちに感じられるに違いない。そんな自然環境のなかにあえて研究者を晒そうとしている。そのほうが研究者にとって相応しいと判断したのだろう。

大胆な挑戦にも関わらず、細部まで細心の気配りも行き届いているように見受けた。

研究所なのに、室内がダークな色調で統一されているのはなぜか尋ねると、小堀は「日本民家の色調を参考にした」と答えた。なんと自由な発想か。そういえば、室内は研究室というより、しっとりと落ち着いた居間あるいは応接間のような雰囲気が漂っていた。

写真は撮れなかったが、地下には大きな実験器具を備えた実験室があり、研究機関としての機能が整っていた。

近代建築の常識にしばられない、自由な創造力が思い切り発揮された、21世紀の現代に相応しい建築だと感じた。

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コメント: 1
  • #1

    かんてつ (木曜日, 04 9月 2014 09:55)

    この屋根、凄いですね。
    外側が構造体で中の膜と2層になっているようですが、
    断熱効果も狙ってるんでしょうか?
    アラップはドームの魔術師?ネルヴィの再来?

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。