ドイツを歩く—5:ローテンベルク(古都に残る石工の技)

ローテンベルクの街並

メインストリートに建つ木と石でできた大きな家々。

市庁舎のあるマルクト広場。中央の市庁舎正面の石の階段を登って、左端の白い新市庁舎の塔に登れる。右側の市議宴会場には三つの時計がついている。この辺りが街の中心だ。

市庁舎。中央の丸い石の階段塔を登ってゆく。旧市庁舎の内部を通って向こうに見える新市庁舎の塔までゆける。

ローテンベルクの街並

マルクト広場は一日中にぎわっている。

路地には人々の暮らしの面影が漂っている。

市内に点在する古い市の門。ここからは2個の門が見える。

コポルツェラー門とジーバー門。右のコポルツェラー門は場外への道。

友人が40年前に同じ場所で写真を撮っていた。細かく比較してみたが、違うところはどこにもなく、完全に一致した。変わらないところに価値がある。

市の範囲が小さかった時の古い門らしい。こんな古い門が市内には沢山残っている。これがローテンブルクの街の風景に独特の彩りを添えている。

古い市の門「レーダー門」と「マルクス塔」はいまでは完全に旧市街の中に取り込まれている。

昔はここから内側は市内として厳重に守られていたから、ここに不法な侵入者を捉えて入れておく石造りの小さな窓のある牢獄も作られている。

門は単なる飾りではないことが実感できる。

この街の看板はなかなか手が込んでおり、楽しめる。

市の周りを取り囲む城壁。城壁への登り口の階段は木造で危なっかしい作りである。木造はどこも無造作で危なっかしい。

ローテンベルクの市壁

城壁の内側には武者走りが回っている。

城壁の武者走りは一般に開放されており、観光客は自由に歩くことができる。ここを歩くとほぼ旧市街の周りを回ることができる。いろんな観光客とすれ違うため、「グーテンターク」「ハロー」が飛び交う。

ここが旧市街の東端にあるもっとも古い城門「ブルク門」。屋根などにおとぎ話のような、いかにも古いスタイルを残している。

市庁舎の階段を登ってみる。古い窓から街並が見える。

ローテンベルクの街並

市庁舎の塔から足元のマルクト広場と旧市街を見下ろす。赤い瓦、急勾配の屋根。広場に向かってパステルカラーの妻壁が並んでいる。まるでおとぎ話のようなローテンブルクの街を一望のもとに見渡すことができた。

勾配のきつい屋根。赤い瓦がどこまでも続いている。

瓦の一部をガラスに置き換えて、簡単な明かりとりをつくることができるらしい。城壁の武者走りは高いので、このように民家の屋根を見下ろすことができる。

この瓦、じつに簡単な方法で止めている。瓦の裏側に突起があって、屋根の桟にひっかけているだけなのだ。これで雨が漏らないのだろうか。城壁の武者走りを歩くとこんな部分が手に取るように見える。

ローテンベルクの階段

市役所の石の階段。何もかも石でできている。石が飴細工のようだ。

ローテンベルクの階段

階段を見上げる。中心部の螺旋を見ると、じつに精巧にできていることがわかる。

ローテンベルクの階段

こんどは上から見下ろす。中心部の螺旋は、やはり非常に正確にできていることがわかる。石がこんなに柔らかな表情を見せるものだろうか。

ローテンベルクの階段部屋の天井

階段の天井には、みごとな石の装飾が施してある。ゴシック建築のアーチのリブを切断し組み合わせたような非常に精巧な作品である。まるでケーキの上に柔らかなクリームを絞りだしたようなタッチではないか。石工の技術は驚くほど繊細だ。

市庁舎の部屋。室内の柱、梁、など木造だが、石造とは対照的に非常に稚拙で無骨なものであった。この街では石工の技は驚くほど高いが、大工は百姓の片手間のような稚拙なものであった。

聖ヤコブ教会の二階にあるリーメンシュナイダーの木彫「聖血の祭壇」の中央部、最後の晩餐の一部である。

中世末期に現れたこの彫刻家の作品は凄まじい力を持っている。彼は木の表現力をつきつめて、このあたりから無彩色になっていったという。その表現力には目を引きつけられる。

木を使ったものと言っても、大工仕事と違って彫刻的なものは非常に高い技術力を見せているが、それはこの彫刻家の影響にちがいない。

この教会の石造の柱から梁へと滑らかに移ってゆく表情のみごとさ。こちらは静かで優美な表現にうっとりと見とれてしまう。

ローテンベルクの石工の技

その部分、これ見よがしの表現ではない。しかし、よく見るとため息がでるほど精巧な細工だ。石工の技の見せ場だ。

そんな技は外部のアーチにも見られる。壁から滑らかに伸びている梁の取り付き部分の細工の見事なこと。すごい腕前だ。この街の石工は石材を自在に扱う極めて高度な技と持っていた。

窓の上部の装飾的な納まり。じつに手が込んでいる。石工たちはわざわざ腕の見せ場を作って競っているように見える。ここには経済も効率もない。頼まれて造ったのではなく、自分の納得のいく仕事をしているだけのように見える。

そんな作品だけが数百年の時を超えて人に感動を与えることができるのかもしれない。

市の南端、シュピタール門の一部。古い中世の木造がむきだしになった素朴な堡塁部分。

シュピタール門の石造の堡塁。外から入るいかめしい門の構え。一番新しいといっても500年も前の石造の門だ。

丸みのある独特の要塞になっている。

すでに大砲が主役になった時代に対応して、非常に頑丈にできている。石造の壁に木造の屋根を乗せる工夫が見える。堅固な堡塁だが、どこか愛嬌があり優美だ。無骨な建築なのに、実用だけでなく、美しさが追求されているところが興味深い。

たしかに、中には大砲が据えてあった。

目玉のような窓をもったこの建物はユースホステルであった。もう少し若ければ、こんなところに泊まってみたいものだ。

ドイツでは、どこのホテルでも、この形式の窓が使われていた。

ノブを上向きにすると、窓は内側に少しだけ倒れる。朝はこのようにして換気してあることが多い。木製だが、気密性が高いので、意識的に換気するのが習慣になっているようだ。ガラスは必ず二重になっている。

ノブを横向きにすると、横にスイングして開くことができる。

両方の窓を全開にするとこんな感じ。

閉じて、ノブを下向きにすると、完全にロックされる。しっかりとした木製なので遮熱性も遮音性も高い。単純な操作でさまざまな開閉ができる。非常によくできた機構だ。これがドイツの窓の標準仕様らしい。

旧市庁舎の横手、通用口のようなところ。大小二つの入口が並んでいる。

石の縁飾りも見事だが、木製のドアの彫刻がまた美しい。

左手の小さな扉。石造の破風飾りの中に、木製のドアがありそこにも石と競うように同じ破風飾りが繰り返されている。

なんとも手の込んだ装飾ではないか。

右手の大きな扉にも左右の扉に同様な彫刻が繰り返されている。

よく見ると実に手がこんでいる。このドアは最も精巧なものだが、市内の住宅のドアはすべて木製で、程度の差はあるが、どれも気持ちのこもった細工がほどこされていた。

この街には中世の彫刻家リーメンシュナイダーのDNAが受け継がれているのだろうか。

ごく普通の商店の入口のアーチだ。一見無造作に造られたアーチだが、よく見るとこんな所でも実に精巧で美しい。


ローテンブルクは中世風の街並が人気だが、そんな街並の美しさを支えていたのは、市内の至る所に散らばっている石工や彫刻家たちの無心な技の集積だった。

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。

 

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