ガウディの栄光と悲惨

バルセロナ最大のモニュメント、サグラダ・ファミリアは巨大な重機にかこまれてなんだか悲しそうだ。

キリストの生誕のエピソードを沢山の彫刻で表現した「生誕の門」、ガウディが自らの手で生み出した、まさにガウディの建築だ。

建築と一体になった、とろけそうな石の彫刻群。よく見るとキリストの誕生の逸話が見えてくる。

これらの彫刻のリアルな表現のために、ガウディは人間から直接型をとるなどさまざまの工夫をこらして生き生きとした彫刻を作り上げたといわれている。

ガウディはあらゆる細部にまで気を配って、作り続けたため、ガウディが自分の手で仕上げたのは、わずかに生誕の門の周辺だけであった。

柱を支えている亀。至る所に具象的な形が表現されている。

タワーの階段の小さな窓からはバルセロナの街が見える。

中に入ると、巨大な空間が上空高くそびえている。ガウディの手を離れ、近代の技術を駆使して建設が続けられているからだ。

巨大な聖堂が出来ているのだが、ここにはガウディの魂はない。ガウディの心はない。効率よく巨大な聖堂が建設されているだけだ。

その大げさな建設にガウディは圧倒され、悲しんでいるように見える。

ガウディの模型に基づいて作っている、というかもしれない。しかし、ここにはガウディの心はない。感動はない。

これを見るためにスペインまできたのではない。

こんな建築をつくり続けていいわけがない。

足下にあった、小学校、ガウディが職人たちのためにつくった小学校がよかった。波打つカタロニア・ヴォールトがじつによい。

 

ガウディは自分の生きている間には完成できないことはわかっていた。だれかにバトンタッチしなければならないこともわかっていた。

しかし、まさかこんな形で完成を急いでいるとは夢にも思わなかったにちがいない。こんなことなら、生誕の門までにして、永遠に未完の聖堂として残したほうがはるかに価値があったにちがいない。

今の聖堂建築はガウディを辱めるものである。

ガウディは泣いているにちがいない。

 

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。

 

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