KITTE、保存建築の光と影

やってきました。KITTE、東京中央郵便局の解体にともなう一部保存活用ビルだ。なぜか中央に巨大な三角形の吹き抜けがあった。

三角形の三面は、一面が保存部分、他の二面が新築分に分かれていた。それが非常に対照的にデザインされている。

 正面と右は新築部分。ガラスの手すりに繊細な縦縞。

保存部分は4層まで完全に柱と梁の骨組みだけになっている。5層目は少し壁が大きい。しかし、意識的に骨組みを強調している。

 骨組み以外のデザインを極力排除している。 保存されたのは外壁と2スパン分。

 この保存修復、全体の設計は三菱地所、内部のデザインは隈研吾。アトリウムが隈さんのデザインの最大の見せ場だ。

上に上がってみると、吹き抜け部分は回廊で取り囲まれており、各階ともグルグルと回る事ができる。明るく開放的で気持ちがよい。

 保存部分は柱の存在感が際立ち、新築部分はガラスの手すりのみと対照的なデザインとなっている。

保存部分はあくまでも骨組みのみを残して、常に骨組みが見えるようにしている。トップライトから差し込む日差しが明るい。

 明るい日差しを隈さんの繊細なデザインが受け止め拡散し強調している。

 保存部分の柱はなぜか8角形だ。もともと8角形であったらしい。

保存部分にはすべて(例外もあるが)店が入っている。どれも骨組みを見せ生かしながら上手にデザインしている。

保存部分のすべての店が東京駅に面しており、その大きな窓はカーテンなどが禁止されているらしく、どの店からも東京駅の赤煉瓦が目の前に見える。

窓は郵便局時代のデザインがよく踏襲されており、窓自体も見物だ。

高く大きな窓はこの建築の特徴だが、それがきれいに生かされているのは実に気分がよい。

骨組み、スケルトンの中に店が入っている様子がよく見える。デザインのポリシーがしっかりと作られ、よく守られているのだろう。

3階部分を見ているが、階高はかなり高いことがわかる。この高さが転用に際して生かされているに違いない。

  不要となった過去の建築を取り壊す代わりに、別の用途に変更して改造することを「コンバージョン」と呼んでいる。

 パリの地下鉄駅を美術館にして活用した「オルセー美術館」がよく知られているが、実はヨーロッパにはそんな例は少なくない。

 KITTEを見ていると、残されたのは一部なので、コンバージョンとはいえないが、その面白さ、楽しさが感じられるのではないだろうか。

店も東京駅の見える窓辺をよく生かしている。

天井を張ってかなりしっかりデザインした店も。なにしろ、100に近い店を全国から集めたそうだ。他にみない個性的な店が多い。

お父さんは店の前でひたすら待ちぼうけ。

おや、建築模型で使う小さな紙の人や木や動物があるぞ。

福永紙工という建築模型用の専門の会社の製品らしい。この他にも不思議なものを売っている店が多い。

ここは郵便局長室。ここだけ、当時の壁面などが再現されている。

局長室の窓からは、やはり修復再建された東京駅のドームが目の前に見える。東京駅の見える角度が最高だ。

プラザを見下ろすとトップライトの影が投影されている。大きなトップライトから差し込む光が明るく、日差しがまぶしいくらいだ。

 床の8角形の模様、これは撤去した柱の跡にちがいない。つまりこのアトリウムは撤去された旧局舎の跡地ということだ。

外回りは当時の外観がよく保存されている。保存された非常階段や煙突のある南の端部とともに東京駅の南端部分も見える。タイルもきれいに修復されており、気持ちがよい。

ここから見ると高層ビルのタワー部分がかなり後退しているので、中央郵便局は完全に保存されているように見える。

高層部分が十分後退しているため、保存部分の独立性が高く、建築としての気品を感じることができる。

 中央郵便局の外壁がこの部分だけ大きく湾曲している。こうした局面のデザインがこの建築を独特の存在にしている。

ここが時計のある中心部分ということになる。じつに端正な美しい窓だ。1階が一番高く、2、3階が少し低くサッシ4つ分、4階がさらに低く3つ分になっている。4階と5階のあいだでいったん小さな庇を回して切断している。これが全体のバランスの上で実によくきいている。そして最上階の上にさらに小さい庇。

 モダニズムの最初期の作品と言われながら、この庇が様式建築の残滓だと非難されることがある。しかし、これこそがこの建築の美しさの秘密なのだ。

 じつにいいプロポーションだ。うまいねえ。吉田鉄郎の最高傑作。よくぞ残してくれました。拍手。

窓周りのデザイン、じつによく考えられている。柱の横の小さい壁、窓の下の水切り、そして窓の上のマグサと、よく見ると、わずかな出っ張りと引っ込み、それが壁に微妙に影を落とし、陰影を生み出している。さらに白いタイルの貼り方を縦横と変化させ、平板に見えることを避けている。見事ですねえ。

庇の先端部分をよく見てください。考えぬいたディテールですね。窓の上と窓の下のタイルもきれいですね。設計する人、現場でタイルを貼る人の愛情がこもっています。それが見る人に伝わってきます。

 吉田鉄郎という建築家の穏やかだが、厳しい性格まで想像できます。

 コーナーのわずかな曲線、局面が優しい気持ちを伝えていますが、このような曲線、局面はこのあとモダニズムが徹底して排除してゆくことになる。

屋上も開放してくれました。眼下に東京駅を見下ろす絶好の撮影ポイント。

こんなに広いスペースができたんですね。

2階に不思議な入口を見つけました。「インターメディアテク」と書いてある。東京大学の博物館だそうです。詳しくは日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館が共同でつくったもの。大学の奥深くに死蔵していた学術標本類を一般公開するためにここにオープンした。2階と3階を使ったかなり大きなスペースだ。しかも、入場無料。驚いたなあ。

おーっ。2階と3階の間の吹き抜け部分に恐竜の骨だ。

動物の剥製。骨、など、まー、いろいろじつに興味深いものがこれでもかと展示してある。こんど孫をつれて来てみせてあげたいなあ。あーっ、驚いた。

中央郵便局の外壁保存と超高層ビルのセット。保存の事業としては成功したと言ってよい。おざなりではなく、この建築の良さを十分理解して、うまく保存し、しかもその魅力を十分引き出して、さらに魅力的な場所をつくりだした。近代建築の外壁保存に成功したといってよい。

 これほど大規模な近代建築の外壁保存再生は、他に類を見ない。 東京駅周辺には保存事業が多いが、これは丸の内ビジネス街の立地のよさを十分生かして、成功したわけだ。

 全体の設計は三菱地所、インテリアの設計が隈研吾。あれ、あれ、歌舞伎座と同じ顔ぶれですねえ。

 おそらく丸の内界隈の保存再生事業の最後の作品だろう。高層ビルとセットにした保存事業としては、三菱一号館、歌舞伎座、そしてKITTEと、さすがに習熟したうまさを感じさせてくれます。

 しかし、一つだけ残念なことは高層ビルが大き過ぎることである。曇りの日はまだよいが、晴天の日は、東京駅も駅前広場もこのJPタワーの日陰になって陰惨な感じがするほどだ。こうして写真に撮ってみてもこのタワーは異常な大きさだ。

 東京駅の空中権を買って高くしたためにこの保存も実現したと言われているのだが…。

 都市計画の専門家がこうしたお金のやりくりにばかり知恵を絞って、異常なバランスの悪い都市を作ってしまうことには疑問を禁じ得ない、と一言苦言を呈しておこう。

 

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。

 

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