築地松の風景

出雲 斐川平野の築地松のある風景
出雲 斐川平野の築地松のある風景

出雲、斐川平野には「築地松」(ついじまつ)という防風林のある屋敷が、田んぼの中に点在する。

屋敷を取り囲むように「黒松」を植えて、屋敷がすっぽり隠れてしまうくらいの大きさの直方体に刈り込んだものだ。

親、子、孫、三代の屋敷があるのだろうか。

昔と比べると、ずいぶん減ってしまったらしいが、それでも、さがすと、まだかなり残っている。

田んぼに映った姿はなんとも言えず美しい。

おっとと、なんとか持ちこたえているぞ。

もともとこの地方は洪水のたびに水浸しになったので、土を盛って家を建て、土の補強のために樹木を植えたらしい。それが、次第に防風林として整形されるようになったものらしい。

いまでは、防風林の役割よりも、独特の形がこの地方特有の風景を造っていることを誇りに思い、努力して維持しているらしい。

よく見ると、家によって独特の特徴があり、美しさを競っているようにも見える。夕陽に浮かび上がった松の幹はとりわけ美しい。

本来、立体的なはずの松が平べったい押し花のように見えるのが面白い。

近年、松食い虫の被害が大きく、長年丹精込めて育ててきた松が突然枯れてしまうことがあるらしい。そこで、松食い虫の防除の指導など、努力しているようだ。

築地松の維持のためには、定期的な刈り込みが欠かせないが、費用がかかるほか、職人も減少しているため、定年退職後自分でやっているという人もいた。

高いところは、はしごを2段に継ぎ足して登るそうだ。

どうしても、角を尖らせて強調したくなるらしい。

西と北の2面の風(主として西風)を防ぐため、L形の見事な形になっているところもある。ここまでくるとまるで「建築」といってもおかしくない。生け垣のモダニズム!!

いかにも風に立ち向かっているような築地松。

うーん。かなりがんばってますねえ。ゴールキーパーの築地松。

まるで電線に合わせたかのような美しい曲線もありました。

シルエットの築地松。スパっと、切りそろえたラインがお見事!!


日本各地に防風林はあるが、自然と人工の絶妙なバランスが防風林を「芸術」しかも、極めて建築的な「芸術」にしてしまったのはここ、島根県出雲地方、斐川平野しかない。

しかし、松は生き物だ。手を抜いたら、たちまち崩れてしまう。頑張ってほしい。

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コメント: 2
  • #1

    たま (火曜日, 11 8月 2015 15:25)

    相模書房って何時頃閉店したんですかね?

  • #2

    かくさん (水曜日, 12 8月 2015 10:07)

    2〜3ヶ月前から開店休業状態でしたが、8月からは事実上、閉店状態です。このまま閉店するようです。書店にまだあれば本は買えますが、注文はできません。

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。