香川県立体育館を見る

香川県立体育館 設計:丹下健三 1964(昭和39)年
香川県立体育館 設計:丹下健三 1964(昭和39)年

「香川県内の屋内競技はほとんどここで行われてきたんですよ。」

「県民にとっては、誰でも知っている大切な場所ですよ。」

香川県のスポーツの「聖地」とさえいわれているそうだ。

私を乗せたタクシー運転手は懐かしい気持ちを込めて現場へ着くまで話し続けた。

それは、想像をはるかにこえた独創的な形をしていた。何と言っても体育館に和船を模した形は他に類のないものである。

これができたのは、1964年、なんと東京オリンピックの年である。

つまり、代々木の総合体育館と同時に出来たのだ。

つまり、丹下健三は、代々木と高松に同時に釣り構造の巨大な屋内競技場を設計していたのである。

しかも、下部にマッシブなコンクリートを置き、屋根を釣り構造で架ける、という基本的な構造の仕組みは、代々木と同じ考え方ではないか。

庇裏の打ち放しコンクリートの見事なこと。たぶん一つ一つ全部異なる形のようだ。角を曲線にした菱形がじつに精密に出来ているではないか。

つまり、現場で型枠を造って、鉄筋を配置し、コンクリートを流し込んだわけだ。

ここがエントランスであろう。

屋根の雨水を落とす「雨樋』いわゆる「ガーゴイル」である。

雨樋の下には、岩と池、日本庭園の岩と滝と池のようなものであった。

岩が砕け散ったかのようなデザインである。

丸い穴は空調の吸排気のための開口部だろうか?

離れると和船の舷側のような大きなコンクリートの側桁がきれいに見えてきた。

まるで魚がはねているような、可愛らしいすがたではないか。

よく見ると、打ち放しコンクリートの型枠と文様が微妙にずれているのがわかる。しかし、そこに、悪戦苦闘して作り上げた、手作りの痕跡がうかがえて、じつにほほえましい。

工業製品とは異なる手作りの一品生産の建築の楽しさだ。

この部分、まさに和船、千石船の船頭と水夫たちの、怒号と歓声が聞こえるようではないか。

丹下の作品の中で、日本の伝統とモダニズムの融合が追求されたのは、広島を始めとして、東京都庁舎、香川県庁舎、倉敷市庁舎と、柱梁のラーメン構造とされてきた。しかも、手本とされた伝統とは、桂離宮、伊勢神宮であった。

丹下の作品のもう一つの系譜、大空間構造は技術の追求に全てが優先してきた。ところが、ここ、香川県立体育館だけが、和船という極めて具体的な、日本の伝統的形態がかなり直裁に写し取られた。

丹下作品の中でも極めて例外的な作品なのである。

なぜ和船だったのか。当然、日本の海を代表する瀬戸内海を我が物顔で往来していた海の王者、和船、なかでも千石船を意識したに違いない。

強大な舷側材を支えるために、力強い台座が踏ん張っている。

力と力がぶつかり合った、こんなに激しい造型がほかにあっただろうか。

反り上がった舷側材は腹筋運動をしている運動選手のようでもある。

後方の形も前方と変わりない。

対照的な造型であった。

反対側の雨樋であるが、雨水を受ける岩の形が異なっているだけで、建築の形は全く同じであった。

この体育館、長年県民の体育の殿堂として親しまれて来たもの。

しかし、耐震診断の結果、「天井の落下の危険がある」ため、補強工事を実施しようとしたが、3度の入札が不調に終わったため、取り壊しを決断した、と説明されている。

また、天井の高さが足りないため、バトミントンなど正規の試合に使えないとしている。

 

1964年完成といえば、築後50年である。

たしかに、最新の設備に比べれば、使いにくい部分もあるに違いない。

しかし、これだけ大胆で野心的な建築は2度と造ることはできない。世界に類のない建築だ。

 

建築が古くなると、必ず「耐震性」が問題になる。「天井が落ちる」「危険だ」と言われる。しかし、本体が危険なわけではない。天井である。「天井」は屋根の下にぶら下げた簡単なカバーにすぎない。もし、入札が不調に終わったのなら、設計を見直してもっと簡単なものに直すだけでよい。

なぜ、設計をやり直さずに、いきなり全体を壊すという結論に行くのだろうか。

この、世にも珍しい構造が危ないというわけではない、「天井」はいくらでも簡単な方法があるはずだ。

 

天井が落下する危険があるのなら、天井を全部取りはずせいい。それが見苦しければ、軽量のネットのような天井を架ければよいだけである。

 

天井の高さについては、高さを必要としない競技、用途はいくらでもある。

 

モニュメントとして見るならば、これほど、分かりやすく、印象的なものはない。

県民の記憶に深く刻み込まれた施設だ。

香川県庁舎とともに、高松に残る丹下健三の作品として、見学のルートに入れることを勧めたい。必ずや20世紀の香川県を代表する建築として世界的なモニュメントになるに違いない。

 

香川県庁舎を「静」とするなら、体育館は「動」。対照的な二つの丹下作品。県庁舎を見学する人は体育館も併せて見学してほしい。

 

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コメント: 9
  • #1

    山口 哲夫 (月曜日, 13 3月 2017 17:58)

    46年前私は17歳 この体育館で昭和46年夏の全国高校バスケットボールインターハイが開催され、我々のチームはこの大会へ出場しました。
     最大の思い出は、今の天皇陛下が皇太子様の時代にご夫婦で観戦にお越しになられました。我々のチームと隣のコートでは優勝候補明大中野高校で活躍の北原さんのチームがゲームを展開中でした。そこへ思いがけず皇太子様が観戦にお越しなられ、ゲームが中断したことを覚えています。ご挨拶を頂き御礼を申し上げてからゲームを再開した我々には非常に大切な思い出の体育館です。
     もし存続が叶わないと、我々と高松市との縁 絆が切れ 今や私達いや当時の全国のバスケを志した中年者の青春時代の大切な思い出が吹っ飛んでしまい悲しみしか残りません。
     私は一昨年香川県の教育委員会へ当時の話もさせて頂き存続への希望を伝えてあります。また我々当時のチームメイトは当時の同県から出場の女子チームメンバーへも声をかけ、この体育館への思いを共有しようと立ち上がろうとしています。
     高松市香川県には是非存続下さるよう尽力頂きたく希望いたします。
     以上 大切な青春時代の思い出を持っている我々がいることをお知りおきください。

  • #2

    小川格 (月曜日, 13 3月 2017 19:37)

    やはりそうだったんですね。
    この建築には、全国の若者の汗と思い出がぎっしり詰まっているのですね。
    素晴らしコメントを頂きました。
    建築はただの箱ではありません。ここで青春の日々を送った若者たちの思い出が塗り込められているんですね。今の状態は本当にかわいそうです。残して下さいと声をあげましょう。応援します。

  • #3

    山口 哲夫 (火曜日, 14 3月 2017 07:56)

    この丹下健三さんの上から見ると亀形 横から見ると船形(高松市のシンボルでありその当時の憧れのコート(冷房でプレーした))、代々木体育館の素晴らしいコート・建築物(バスケのメッカ) そして広島の原爆公園 設計者の丹下さんの心のこもった建築物は、古からの大和魂を引き継いできた日本人だからこそできた建築物だと思いますし 残すべき建築物と思います。
     そこで 昭和46年8月1日 インターハイがこの体育館で開催されました。こに日に因んで見学会 親睦会が開催できればと思います。このコメントを見られた方々には如何でしょうか。

  • #4

    小川格 (火曜日, 14 3月 2017 10:55)

    いいですね。
    8月1日に見学会、親睦会、ぜひ実現しましょう。
    そのときには、ぼくも馳せ参じます。

  • #5

    山口 哲夫 (火曜日, 14 3月 2017 20:38)

    済みません 廻りからは土日では との話を受け 前週の7/29土曜集合 親睦夕食会、 7/30 日曜 午前研修会 解散 とのスケジュールで考えたいです。ご覧の方々 残すための方策提案をまとめましょう 。

  • #6

    小川格 (水曜日, 15 3月 2017 19:40)

    7/29、30、いいですね。
    ぜひ、内部の見学会ができるといいですね。
    もし、インターハイなど、この体育館にまつわる思い出の写真を送っていただければ、掲載させていただきます。説明をつけて写真を送ってください。何枚でもけっこうです。

  • #7

    カワニシノリユキ (土曜日, 23 11月 2019 11:51)

    偶然、このブログを発見しました。
    いまこの「船の体育館」こと香川県立体育館の保存再生運動をしている河西と申します。
    小川さんや山口さんの大切に思う気持ちを見て、モチベーションが上がりました。引き続き努力します。
    https://www.facebook.com/kagawakentaihozon/?ref=bookmarks

  • #8

    小川格 (土曜日, 23 11月 2019 12:28)

    地元で保存運動をしている人がいたのですね。
    頑張ってください。応援しています。

  • #9

    (土曜日, 27 8月 2022 22:15)


    件名

    コロナウイルスを増やしてるのは

    GPSを作り出した【米国防総省(米国スパイ)】

    症状もこいつらが作り出してる

    〈本題〉

    コロナウイルスだけじゃなく

    痛み、病気、争い、うつ病、認知症、自殺、殺人、事故、台風、地震など

    この世のほぼ全ての災いを

    【米国防総省】がAIを使った軍事技術で

    秘密裏に作ってる

    やらしてるのはCIA

    【CIA】(米国スパイ)こそが

    秘密裏に世界を支配してる闇の政府

    北朝鮮を操って、ミサイルを打たせたり

    雑菌を増やして、耐え難い臭いにしたりする

    同じやり方で、コロナウイルスも増やす

    AIを用いたレジ不要のコンビニ

    このコンビニは

    人の動き、棚の重さなどをAIが調べて

    お客が商品を持って出ると

    スマホで自動精算されるんで、レジが不要

    この仕組みからわかる事は

    AIは多くの人の言動を見逃さずに、1度に管理出来るって事

    このAIの技術を米国スパイが悪用し

    人工衛星を使い

    全人類を24時間365日体制で管理して

    学会員や悪さした人を病気にしたり

    事故らせたりして、災いを与える

    こんなに大規模な犯罪なのに、世間に浸透してないのは

    AIが遠隔から、各個人の生活を管理して

    生活に沿った、病気や痛みを与えてきたから

    重い物を持ったら、腕に痛みを与えたり

    ツラい事があったら、うつにしたり

    スパイの犯行だから、相手に覚られず

    私生活に便乗して、違和感を持たせずやる

    創価信者から

    お金を奪い取ってるのも、こいつら

    日本支配に創価を利用してるのが

    【CIA】

    創価に入ると

    病気が多発するし

    ケガやら家庭の揉め事やらが激増する

    これらも、米国スパイのAIが作り出してる

    創価の務めに精を出すと、それらの災いを弱めて有り難がらせ

    莫大なお布施をさせる

    10年前の創価の財務が

    年間2,500億円(無税)

    1日あたり6億8,500万円

    資産が10兆円超え

    世界1位の企業だった、トヨタ以上の資産額

    米国スパイが、軍事技術でイカサマして集めたお金

    騒音攻撃に至っては

    救急車の音で嫌がらせする為に

    AIが遠隔から痛みを与えて、病人を作り出すし

    パトカーが付きまといをする、集団ストーカーは

    Alが警官を操って

    いかにも、警察が嫌がらせしてるように工作

    「救急車、ノイズキャンペーン」

    「パトカー、集スト」などで、検索すると出る

    行く所行く所で

    周りの人が、咳払いしたりする集ストは

    AIが被害者の周りの人に周波を当てて

    咳払いをさせてるだけ

    咳をした時の周波数と同じ周波を当てると

    人為的に咳を出させる事ができる

    TBSラジオ90.5MHz、ニッポン放送93.0MHzに周波数を合わせると

    これらのラジオを聴ける

    これと同じように、周波数(振動数)を変える事で

    意識操作や精神疾患を作り出す

    蛍光灯に虫が集まるのは

    ある決まった周波数の紫外線に、吸い寄せられてるから

    虫ですら周波で操作が可能

    27~38Hzで不眠に

    48~55Hzで喘息に

    88Hzで片頭痛が引き起こされる

    それぞれの病気が、それぞれ決まった周波数を持つ

    これらの周波数と、同じ周波を当てると

    波動が共鳴して

    どんな病気でも作り出せる

    以上

    この犯罪を終わらせる方法は

    ◆この犯罪のからくりを、多くの人に広める

    ◆宗教法人への課税

    ◆公明党(創価)を政権の座から下ろす

    https://shinkamigo.wordpress.com

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。