歌舞伎座の悩ましさ

駅のポスターに歌舞伎座が出た。いよいよ4月にはオープンするらしい。長らく工事中だったが、囲いもとれたようだ。そろそろ行ってみるか。

おお。完全復元みたいだ。壁が白くまぶしい。

背後の超高層ビル、これこそ立て替えの目的だったようだが、適度の後退があり、ほとんど気にならない。のしかかるような圧迫感はない。外観は忠実な復元だし、内部はトイレが増設されたり、迫りが深くなったり、不便が解消されるらしい。千鳥破風、唐破風も忠実に再現されている。歌舞伎ファンはうれしいにちがいない。

背景の超高層ビルのデザインも控えめで手前の歌舞伎座をよく引き立てている。これなら合格だ。

さすが、入口の唐破風、みごと!!ここまでサラリとやってのけるのが、隈研吾かもしれない。その割り切り方、拍手。

ところでこれは、1924年岡田信一郎設計による歌舞伎座。屋根に三つの千鳥破風が見える。これがオリジナルのデザインだった。非常に華やかな造形だ。

これは壊す前の歌舞伎座。岡田信一郎のものと比べると中央の大きな千鳥破風が省略されていることがわかる。今回の復元はこれを忠実に再現したものだ。実はこれ、吉田五十八の設計だ。

戦災をうけて半壊していたのを1950年に修復した際に岡田の弟子、吉田は大きな千鳥破風をはぶいてしまったのである。真ん中の屋根がなんだか寂しいのはそのせいだ。

吉田は和風建築の名手として有名だが、その特徴は和風の近代化を進めたことだ。和風の過剰な装飾を省き、シンプルにデザインしていった。住宅はもちろん、成田山新勝寺にその特徴がよく現れている。

歌舞伎座で大破風を省いたのもその主張の現れだ。

吉田は近代の建築家だったのだ。

今回の完成予想図だが、やはり、大破風は省かれている。岡田信一郎に戻ろうとはしなかったらしい。隈研吾は吉田五十八の歌舞伎座を選んだわけだ。少し残念!いっそ岡田信一郎に戻してほしかったなあ。

歌舞伎座をめぐる議論は「歌舞伎座の謎」をご覧ください。

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コメント: 1
  • #1

    kozyken (火曜日, 26 2月 2013 16:54)

    小川さん、絶好調ですね。大阪まで取材に行くなんてすごい!
    築地の新歌舞伎座は先日前を通りかかったのですが、夕方見たせいか、あまりピンときませんでした。忠実に再現するという限界はあるのでしょうけれど隈研吾らしくないと思いました。
    村野さんの歌舞伎座はすごいですね。
    それから、木村得三郎と言う人は知りませんでしたが、いいですね。何年か前に大阪へ行ったときに偶然、心斎橋の大阪松竹座を見て、気になっていました。

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。