透明感きわだつ軽井沢千住博美術館

近代建築は鉄筋コンクリートの発明によってスタートを切った。それを加速したのが、鉄とガラス。壁と柱を消去して、ガラスの透明性を極限まで追求した作品がこれだ。

フィリップ・ジョンソンは四周をすべてガラスとした自邸グラスハウスを造って人々を驚かしたが、それは実際に使われることはなく、芸術的な作品にとどまっていた。この美術館はグラスハウスを超えて、しかも実用的な建築として完成させてみせた。

妹島和世(せじまかずよ)とともにSANAAを牽引してきた西沢立衛単独の作品。

ガラスとともにもう一つの注目点が床だ。地形にしたがってゆるやかに起伏している。建築の床が起伏する作品は、伊東豊雄、妹島和世も試みているが、ここでは、床全体が地形に従ってランダムに起伏している点がさらに新しい。

中庭にとりこまれた植栽と相まって、自然の中を歩いているような自由で開放的な気分にさせてくれる。

丸い四つの中庭もよく計画され、美しい樹形、紅葉がよく映えている。建物の内外に6万株、150種類のカラーリーフの樹木と多年草が植え込まれているという。春の新緑とともに秋の紅葉が楽しめる。

建築が自然を支配するような関係をやめて、自然に寄り添って自然に溶け込んだ作品となっている。それが、グラスハウスのような欧米人の感覚と大きく異なる点であり、西沢の狙いかもしれない。

グラスハウスが直方体の幾何学的形体だったのに対し、この建築は軟体動物のようなイレギュラーな不定形だ。コルビュジエがあれだけこだわった幾何学を軽く乗り越えている。その結果、世界の人々が未だかつて体験したことのない風景が出現したのだ。

中庭の開口部が大きく、小雨交じりの曇天だったにもかかわらず、室内は充分に明るかった。逆に晴天だと明るすぎるのではないかと心配になった。晴天の日も見たいものだ。

アプローチもふんだんに植えられたカラフルな草木が出迎えてくれる。建築の外観はほとんどこれらの草木で隠されている。植栽の仕事もみごとである。

平面図(美術館パンフより)
平面図(美術館パンフより)

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コメント: 1
  • #1

    hidefusa suzuki (土曜日, 19 1月 2013 11:40)

    本当に透明感のある美しい美術館でね。
    ちょっと嫉妬してしまいます!!!
    是非、行ってみたい美術館です。

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。

 

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