2013年

5月

19日

戸隠を歩く:中社・奥社編

中社の鳥居
中社の鳥居

ゴールデンウィークの一日、戸隠を歩こうとやってきた。まずは、戸隠中社。巨大な杉に囲まれた鳥居にたどりついた。

ここまでは、JR長野駅からバスで約1時間。

鳥居をくぐると、いきなり急で長い石段だ。

石段を登ると中社の社殿。千鳥破風と唐破風の組み合わせは神社の定番だが、なかなかバランスがよい。おみごと!

軒先、唐破風の下はなかなか見応えのある構成だ。すべて白木、小口のみ白く塗られている。簡素にして力強い。

社殿を横から見ると、唐破風のある軒の出方が興味深い。絶妙な勾配だ。こんな難しい仕事を昔の大工はよくやったものだ。

それにしても、唐破風はこのように使われたものなのだ。

これと比べると歌舞伎座の唐破風は極めて平面的、ポップなデザインだということがよくわかる。

中社の鳥居の横にあった倉庫のような建物。茅葺き屋根のコケが美しい。

沢山の宿坊がある。茅葺きの大きなものもまだ残っている。昔は遠路はるばる歩いてくると、ここで泊まらなければ参拝できなかったのだろう。

宿坊といっても、中は旅館と変わりはないが、格調の高いものもある。

棟飾りが美しい。信州の民家の形式なのだろうか?

宿坊「横倉」の門。たしかに横に倉もある。いまでは、この倉は改装されて、喫茶店になっている。夜はバーになり、地元のおじさんのたまり場になっていた。

喫茶店の女性は戸隠のことは、何を聞いても打てば響くように見事な返事が帰ってきた。

「横倉」の宿坊玄関は唐破風だ。中は旅館と変わりない。心のこもった料理がでた。

奥社の鳥居。この鳥居も塗装のない簡素な白木だ。ここから奥社の参道が始まる。奥社まで2キロメートル。

参道のちょうど中ほどに随神門がある。ここまではわりと平坦な道。道の両側にせせらぎが流れる、小さな花が目を楽しませてくれる。

随神門から先は、本格的な杉並木になっている。みごとな杉並木だ。連休のせいかさすがに人が多い。

振り返ると、杉の巨木と、茅葺きで赤い随神門の対比が美しい。

戸隠ではここだけ例外的に朱塗りになっている。昔はこの門の両側に仁王様が立っていたというから、ここは今は神道だが、昔は仏教も入っていたらしい。朱塗りその影響にちがいない。

随神門が小さく見えるが、それだけ杉が大きいのだ。

ここから本格的な奥社参道。徐々に上り坂になる。すごい杉並木だなあ。これだけの参道はほかにはないのでは。

雪の残る参道。ぬかるんで非常に歩きにくい。高齢者の困難は目に余る。こんな道が1キロメートルも続くのだ。なんとかしてほしい。一流の観光地、一流の神社参道として恥ずかしくないのだろうか。長野県は超一流の観光資源を持ちながら、十分生かしていない、と感じることがしばしばある。これはその一例。

奥社の社殿へと続く行列。このあたりの足場の悪さは超一流だ。ここまで来てあきらめて帰る人がいた。

参拝を終わって参道入口の鳥居の脇に目をやると、しゃれたそば屋がある。何やら毅然とした風格を漂わせているではないか。

側面に回ってみると、おやっ、これはただものではないぞ。吹き寄せにした板の張り方、その徹底した繰り返し。観光地のただのそば屋ではない。

入ってみる。屋根に沿った勾配天井。シンプルで美しい。形もシンプルなら、色もシンプル。うーん。なかなか見事なデザインだ。これだけやるのはただ者ではないぞ。

後で確認すると、なんと、設計は隈研吾だった。「奥社の茶屋」

HPでみると、

Soba Restaurant at Togakushi Shrine,2003

となっていた。やっぱり…。ここで隈さんに会えるとはびっくりだ。

そういえば、遊歩道でしばしば「熊に注意」と出ていた。

宝光社の社殿
宝光社の社殿

帰りに中社から宝光社まで歩いてみた。畑、林の静かな旧道を30分ほど歩く。戸隠の神社として奥社、中社とともに宝光社は重要な神社だ。ここは軒下の象、龍、など彫刻が非常に複雑だ。しかもここでも全てが白木で塗装がない。ここまでくる人は少なく静かな佇まいは独特な風格を漂わせている。

複雑を極める軒下の彫刻群。木だけでここまで作る技。すごいものだ。改めて感嘆せずにいられない。

戸隠の神社ではどこも白木が基本だった。木の素肌をそのまま使う、なにかこの神社群のこだわりを感じた。カラフルな塗装にこだわる中国、韓国にたいして日本神社のアイデンティティを主張しているような気がした。

非常に手の込んだ彫刻を施しながら、白木にこだわる、そこに高度に洗練された美意識を感じるのではないだろうか。

打放しコンクリートにこだわった、日本の近代建築家の感性に通じるものを感じるではないか。

と、なんとか近代建築にこじつけた結論めいたものにたどり着いた(パチパチ:拍手の音)。

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。